新居昭乃×やなぎなぎ

新居昭乃 LIVE 2018 "Electric Sheep” を語る

2018.12.7更新

音楽性も通じ合うものがあり、プライベートでも親交の深い二人が公式の場で対談するのは、実は今回が初めて。二人の出会いから、新居昭乃の年末ライブ"Electric Sheep”についてまで。たっぷり語り合っていただきました。
なぎさんのマネージャーさんが差し入れてくれたお菓子をいただきながら、のんびりムードで対談はスタート。本当に笑いが絶えない対談だったので、文中に(笑)が多いのはご容赦ください。(笑)

<2人の出会いは?>

やなぎなぎ(以下N):実際にお会いしたのは、ファミリーレストランでのお食事会です(笑)
わたしがツイッターで、「仕事が終わった時とかにファミレスによく行っている」とツイートしたら、リプライいただいて。 同じくアキノさんファンのAnnabel を誘って3人で。
ツイッターも、最初わたしが「アキノさんのファンです」ってリプライ送ったらフォローを返してくださって。以来直接やりとりさせていただいて。…でも実は、ファミレス会が実現したのはそれから1年後くらいなんです(笑)。

新居昭乃(以下A):わたしが「空いてるスケジュールを言いますね。」と言ったっきりで1年くらい…ひどいよね…(笑)

N:お忙しいんだろうとこちらから催促は絶対できないと思っていたんですが、1年後くらいにそっと「今年はどうですか…?」とお伺いをたてて。(笑)

<新居昭乃を知ったきっかけは?>

N:ほんとに…中学生くらいの時からアキノさんの大ファンだったので…。

A:中学生…と言ってもそこまで昔のことじゃないですね。(笑)

N:まずアキノさんの曲を初めてしっかり聴いたのが「覚醒都市」で、すごく素敵と思ったんですけれど、よくよく考えてみたら、それまでにも色々な所でアキノさんの曲とか声を耳にしていていたことがわかって。 そこで自分の中の全部が繋がって「…大好き…」と。(笑) それからはビリジアンハウス(*FM NACK5でオンエアされていた新居昭乃がパーソナリティを務める番組)を聴いたりとか。

N:ハガキは恥ずかしくて送ってないんですが、アキノさんが番組で紹介する曲を聴いたり。 そこからずっと大ファンで…(なぜか声が囁き声に)大好きすぎるという…

(恥ずかしがる二人)

<曲を作り始めた頃の話>

N:ちょうどその頃からDTMにハマりだして、中学卒業するくらいにはもうやっていた記憶があります。

A :その頃の歌ってまだ覚えている?

N:覚えています。できた曲を発表するとかは考えてなかったんですけれど、CD-Rに焼いて残してあります。でも聴くに聴けないです(笑)

A:きっと完成度が高かったと思うな。

N:わたしは結構、時代によって曲が違いますね。 若さ故の勢いで作って、その時はダメだと思った曲とかでも、何年か経って聴き直すと、「これ今作れない(良さがある)…」みたいなこともあります。アキノさんにもそんな曲がありますか?

A:わたしは出せそうなものは全部世に出しちゃったかも(笑)すっとんきょうな曲をだいぶ隠しているのだけど、アマチュア時代にうっかりカセットでリリースしていた曲のリクエストをいただいてびっくりしたことがあります。「タウジャラーの肖像」とか…タウジャラーって何?って感じで。(笑)

<ライブのこと>

N:ライブをやるようになったのはデビュー以降なんですけれど、その2、3年前に1、2回どうしてもと誘われて、「じゃあ頑張ってみる」ってステージに立ったくらいで。それまでライブを自分でやることを想像したことがなかったので、ライブってどうやるんだろう?って。わからなかったんですよね。

A :すごいですね…先日拝見したライブでも、まず歌は完璧!!MCだって見習わなくちゃ。

N:恐れ多すぎます(笑)デビューしてもうライブやるしかなくなって、やるからにはお客様にそれなりのものを用意しなきゃいけないと思って、自分が見て来たライブのこととか思い返して、「こんなことやってくれて楽しかったなぁ」という記憶をかき集めて、自分なりにやってみたという感じです。 ライブをやって、お客様に喜んでいただけたことで安心して、その経験を重ねてどんどんブラッシュアップして、そういう風にわかってきてからは、すごく楽しくなってきました。

A:そうしたら自分でこうしたいとかああしたいとか浮かんできたでしょう?

N: 2回目のアルバムツアーの頃からライブが楽しくなってきたんです。 バンドメンバーと意思疎通ができるようになってきて、面白くなった気がします。 アキノさんもライブは試行錯誤してらっしゃるのかな…と思うことがあります…

A :「今回アキノさん、もしかしてやっちゃった?!」って?(笑)

N:いえいえいえ!そういうことではなくて(笑)

A:わたしはもう、ライブが苦手で苦手で。人前に出て注目されるのがすごく苦手だったんですよね…。10年間ほど、自分名義のものではなくて色んなところでお仕事をしていたのだけど、その間の活動をずっと追いかけて応援してくださっていたファンの方々の存在に、ある日気が付いて。ライブをするのが一番のお礼になるかなと思って、ライブというものに気が向いてきたんですよね…。
でもいざやるとなっても、全然ピアノも弾いてなかったし、歌も人前では歌うチャンスも無かったので、ピアノと歌を一曲通して演奏できたことが無くて。リハの時は、必ず曲の途中で止まってたの。本番ではなんとか最後まで止まらないで演奏できたのだけど、舞台袖に戻ったらみんなハグ!「やったじゃん!!止まんなかったじゃん!!」(笑)って。そんなレベルでした…。
デビュー前に実家の喫茶店でライブはやっていたんですけど…。今考えるとミュージックチャージをいただいて、それがお小遣いになっていたから続けていたような。「歌をお仕事にしていくんだ。」という意識からは程遠かったです。マイナス100からのスタートだったの(笑)。
そんな状態だったけど、9年前にリトルピアノ、弾き語りツアーを始めて…アンコールでリクエストをいただいた曲の歌詞がわからなかった時、会場中が全員で歌ってくださったことがあって…なんでみんな歌詞がわかるんだろう?って。(笑)

N:(笑)

A :それまでひとりで歌って来てたような気がしてたけど、そうやってわたしの曲をみんなが歌ってくれて、ちゃんと「歌が届いてる」ということを実感して、そこからお客様を信頼して歌うことができるようになったという感じです。
あっ。年末のライブはバンドのみんながいてくれて、ちゃんと構築されるので、大丈夫ですよ(笑)。弾き語りの方はわたしひとりなので曲を飛ばしたり、ハプニングがいろいろあるんですけれど(苦笑)。

N:アットホームな感じです(笑)

A:わたしはここ10年くらいで、アーティストとしてやっていくんだという覚悟がやっとできました。なぎさんはとっくの昔にその境地に辿り着いて、ほんとプロフェッショナル。お客様に楽しんでもらいたい。という愛に溢れていて、本当に素晴らしいなと思って。

(照れる二人)

N:わたしも、お客さまを信頼するっていうのは回数を重ねないとわからなかったことかもしれないです。 始めは失敗したら怒られるんじゃないかとネガティヴなことばかり考えていたのですが、お客様の感想が本当にポジティブなものばかりで…。
「わたしの曲をそんなに大切に聴きに来てくれるんだ。」 「わたしもお客様を信じて歌わないと。」という気持ちになったので、今アキノさんと一緒かもと思いました。

A :到達したスピードが違うけれどね(笑) なぎさんはステージにいる佇まいが本当に可愛いらしいんですよね。お客様の方もなぎさんを、そうっと大事にしている感じがして。

N:アキノさんもそうです(笑)こんなこと言ったら失礼かもしれないですけれど、妖精さんだと思っています。

A:わたし実在しないんじゃないかと思われてたこともあります(笑)

(またも照れる二人)

N:こうしてお話ししていても、ステージにいる時と変わらないですよね。わたしの知っているアキノさんだなと。

A:歌だけ聴いてると冷たい人に思えませんでした??

N:そんなことないです!

A :(笑)実はわたしは割とクールな気持ちで歌っていて…、歌い方も甘えた感じになるのがちょっとイヤで。そこには何か説明できない基準があるのだけど…。自分の素が出ちゃうのがイヤなのかもしれない。「演じていたい」のかな。突き詰めると「誰にもわかってもらえなくてもいい」というところでやっているので、優しい人と思われるのはすごく意外な感じがします。

N:人柄なんですかね?アキノさんがそう思っていても、あったかい感じがしてしまうのです。

<歌っている自分と普段の自分>

N:私も結構演じていたい方かもしれません。素の自分と歌っている自分を分けているかも。普段はそこまで感情を出すことをしないですが、歌詞に合わせて、歌では出すこともあって。 でもスイッチがちゃんと切り替わるというか。歌に入れないとかそういうことは今までなかったです。

A :(すかさず)そこが違う!!今の所で差がつきました!(笑) わたしは全然入れないことが…。スイッチが切り替わらないままの時は、だだだだーっと転がり落ちていきます(笑)

N:(笑)

A :持ち直せるようになったのはここ7〜8年で、やっとです(笑)

<ライブでチャレンジしていること>

A:先日の5日連続ライブ(「color palette ~2018 Black~」11月14日から18日までの5日間連続で、全日程異なる編成で行われたライブ)は、すごかったですねー!

N:やろうと決めた時には、わたしもスタッフもすごく盛り上がって「楽しそう!!」となったのですが、実際にセットリストの検討を始めるとすぐに「これは…(負荷が高すぎる)!」となりました(笑)。

A:やり遂げてしまうご本人がすごい…。 わたしはデビュー30周年の時のリトルピアノツアーで、今迄リリースしたアルバムを各公演1枚ずつ丸々再現する、というハードな企画がありました。当初10枚以上のアルバムをやるということだったので、「それは無理。」って頑なに思っていたけど(笑)、最終的に6枚で良いとなって「それならできるかな?」って勘違いしちゃって。

N:最初に多く言われていて、少なくなると勘違いしてできるような気がしちゃいますよね(笑)1ヶ月連続で…と言われた後に1週間連続と言われたら、できるような気が。作戦かも(笑)

<新居昭乃ライブ 2018 Electric Sheep のこと>

A :春の弾き語りツアー「リトルピアノ」は、ほぼひとりきりだけど、年末のライブはいつもゲストミュージシャンをお迎えしてサウンド面で色々と挑戦しています。今回は、わたしはピアノを弾かないので、立って完全に歌に集中できるので、リトルピアノとはまた違ったパフォーマンスをお見せできる… …ようにがんばりたいです(笑)。 ギターの保刈久明くん、キーボード細海魚くん、バイオリンの藤堂昌彦くんと、変則的なバンドサウンドでお届けしようと思っています。

N:それをアキノさんが立って歌う!(笑)

A:全曲リアレンジしているので、私の曲をよく知っている人にも新鮮な気持ちで聴いていただけると思います。ワンステージ立ち続けられるかという体力的な問題はあるけど(笑)

<ステージで緊張しないための決まりごと>

A :なるべく緊張しないようにって、自分なりの決まりごとはあります。足をマッサージするとか、1曲目をアカペラで歌ってシミュレーションしてみるとか。最後はありとあらゆる神様にお祈りして(笑)ステージに出ます。

N :わたしも思い込みというか、「わたしはやれる」と唱えて女優のように自分に信じ込ませて、そうすれば別人になるというか。失敗しても堂々としていられる気がしています。

A:なぎさんは覚悟がね、きちっとできていますよね。わたしも覚悟はあるはず…なんだけど…。今ひとつ自分自身が信用できない(笑) 雑念が無いとちゃんと声が出るのだけれど、上手くやろう。とか気合い入れると逆に雑念が…
以前、すごく体調が悪いままステージに立たなければいけなかった時があって、座っているのもやっとの状況だったのに、思いがけず良い歌が歌えたので「ピアノとわたし以外、何も無い」くらいの極限状態になった方が、かえって歌えるのかもしれない。

N:それはなかなか再現しづらいですね…

A :確かに…(笑)

<Electric Sheep”の向かう先は―――>

A:今AIがすごく気になっていて、今年「Soul of AI」という曲を作ったのだけど、その延長線上で、そんな世界の中にいたいという感じです。なぎさんはAIについて何か考えたことありますか?

N: 先日、謎解き脱出ゲームでアンドロイドを題材にした公演があって。アンドロイドとコミュニケーションしながら謎を解いていく内容だったのですが、最後は自分がアンドロイドの終了スイッチを押さなくては出られないんですね。「ああ…押したくない…(小さな声)」と。

A:それを聞いただけでちょっと…涙が出そう…

N:その時は感情移入してしまって、公演が終わる時には自然と涙がツーと流れてきて、一対一で意思の疎通をしてきた存在を自分の手で終わらせられない…みたいな。

A:人間同士と対アンドロイドの差がわからなくなってくるよね。これからどんどんそういう世の中になっていくのかな…。

N :意思の疎通ができちゃうとどうしても愛着も湧いてしまうので、ただ使うための存在としては見られなくなってきちゃうなと思って。 便利かもしれないけれども、まだ双方の距離感が出来上がっていない所で、これからどうなっていくんだろうなあという気持ちです。

A :日本って八百万の神や、付喪神という、人が物を大事にすると神が宿るという考え方がありますよね。そういう意味で言ったらその人が大事にしている物には全て神が宿る訳で、機械だから人間だからということが関係ないというのは、日本的な考え方なのかなという気もするし、「鉄腕アトム」の漫画の中で、アトムが人間の裏切りにあって「もし僕が人間だったら今きっと涙を流していることでしょう。」って言うシーンが目に焼き付いていて。 その原体験もあって、自分の中で分けられないのかもしれない。

<日本文化ではものを擬人化することが多いことについて。——例えば小惑星探査機はやぶさの帰還のこと>

N:考えると心が痛くなっちゃう。

A :あれは泣いた…最後にはやぶさが撮影した地球の写真。縦に入ったノイズが、涙目で見た地球みたいに見えるんですよね。 行方がわからない間も、地上スタッフが諦めずにずーっと信号を待ち続けて、はやぶさはずっと信号を送り続けていたっていうね…。

N:健気に感じますよね。ドラマがありすぎる。

A :今回のElectric Sheep (電気羊)の世界も、そういう感情移入の物語かもしれない。アンドロイドが夢を見るようにまでなってしまったら、その恐ろしさの一方で、ワクワクもするし、切なくも感じる。そういう色んな感情をサウンド面でも演出面でも表現したいです。
ライブのアレンジをしてくれている保刈久明くんと、細海魚くんにはお伝えしているんだけれど、上がって来ているアレンジに、十分にその意図が反映されていて「ありがとうーー(泣)」という感じなので、本当に楽しみにしていただけたら…! 
なぎさんにも2018年の締めくくりに、Electric Sheep の行く末を見届けていただきたいです(笑)

N:ぜひ楽しみに見届けさせていただきます(笑)

A :そして、なぎさんの2019年は?

N:来年はベストアルバムを同時に2タイトルリリースさせていただくので、そのライブツアーをさせていただきます。大きい会場はバンド編成、小さめな会場はアコースティックで13ヶ所、国内外を回ります。

A :ええええ。すごい…

<オマケ・猫のこと>

A:そういえば、わたしね、なぎさんの猫ちゃん(こむぎちゃん)がツイッターにアップされるのを、いつも楽しみにしているんですよ(笑) 「飼い主が出かけることを察したこむぎ」の写真、可愛かったー(笑) 「お出かけ?まさかどこにも行かないよね??」みたいな顔しているの。

N:めっちゃ目で訴えてましたよね(笑)。 仕事をしていると、邪魔というか…なぜか手の上に乗ってくる。

A:新聞読んでると新聞の上にね!ガサガサーッと。

N:何かやってる時に限って手の上に乗ってくるんですよね。何もしていない時は寄って来ないのに(笑)。

(2018/11/30 渋谷にて)

新居昭乃 LIVE 2018 ”Electric Sheep”
公演日時:12/30(日)17:00 開場/18:00 開演
会場:ヒューリックホール東京
チケット料金:全席指定6,000円(税込)
※別途ドリンク代500円を頂戴いたします
>>公演詳細こちら