PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2020 藤井フミヤ meets ⻄本智実 1/25 @松⼾ 森のホール21 ライブレポート

藤井フミヤが紡ぎ出す2時間の物語 ⻄本智実との3年ぶりのステージで、時空を超えた愛を歌う

2020.1.27更新

公園の豊かな緑に抱かれたホールへと続く道から、物語は始まっていた。藤井フミヤの今 年初のツアー「PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2020 藤井フミヤ meets ⻄本智実」 が幕を開けたのは、千葉県松⼾市の「森のホール21」。遠⽅から駆けつけたファンも多く、 会場が近づくにつれて膨らんだ期待が、場内を包み込んだ。前奏曲にアレンジされた 「Another Orion」が⻄本智実の指揮棒から流れ出すと、観客の胸の⾼鳴りも頂点に達した。

⿊⼀⾊のタキシード⾵の⾐装をまとった藤井は、そんな空気を全⾝で受け⽌め、静かにマ イクの前に⽴った。表情は少し硬い。ビルボードクラシックスでのツアーも4回⽬を数える 藤井をしても、⻄本智実との共演は特別なステージだ。「やや緊張しています」。冒頭の3曲 を歌え終えると、藤井は率直にそう⼝にし、会場の空気を解きほぐした。

「ショートムービーを⾒るような気持ちで聴いてほしい」と語りかけた藤井の狙い通り、 すぐに伸びを取り戻した藤井の声に弦の⾳が柔らかく寄り添い、ドラマチックなストーリ ーが展開された。3年ぶりにリリースしたアルバム『フジイロック』収録の新曲「フラワー」 から、“鉄板”の「TRUE LOVE」、令和も平和な時代でありますように、との願いを込め選 曲したという「鎮守の⾥」まで。それぞれのナンバーを丁寧に歌い込む姿に吸い込まれるか のように、観客の表情が和らぎ、楽曲の世界に⼊り込んでいく。⻄本が芸術監督を務めるイ ルミナートフィルハーモニーオーケストラとの息もぴったりだ。

圧巻は最終曲の「夜明けのブレス」。曲の途中、⻄本がオケの⾳を最⼩限に絞ると、藤井 はマイクを離れ、⽣の声で歌い出した。情感あふれる⾁声に涙を抑えきれなくなった客席は、 最後の⾳が消えた瞬間、1拍の静寂を置いて、うねるような拍⼿で熱演を讃えた。

ドラマはしかし、まだエピローグを迎えてはいなかった。アンコールに応え、再びステー ジに現れた楽団が奏で出したのは、クラシックの王道、歌劇「トゥーランドット」の劇中曲 「誰も寝てはならぬ」だ。プッチーニの名曲をアレンジしたメロディーに藤井の詞を乗せ、 現代のアリアを誕⽣させた。トゥーランドット姫とカラフのストーリーを下地に、壮⼤な愛 を歌い上げた藤井に、満席の客がスタンディングオベーションを惜しみなく送り続けた。

“せっかくだから、オペラのアリアをアレンジしてみては”と藤井に勧めたという⻄本との 軽妙なやり取りも、アンコールでのサプライズとなった。クラシックとポップス、2つの世 界でトップを⾛り続ける2⼈が編んだ美しい物語の余韻は、森から街へと帰る観客たちを 包み込み、響き続けたに違いない。

ツアーは今後、東京(2/5、13、3/3、4)、⼤阪(2/9)、⻄宮(3/8)と、森を出 て都会へと繰り出す。それぞれの地で、どんな物語が紡ぎ出されるか、今から楽しみだ。

Text by 上杉恵⼦

「billboard classics PREMIUM SYMPHONIC CONCERT 2020 藤井フミヤ meets ⻄本智実」

【東京】2/ 5(⽔)東京芸術劇場 コンサートホール 開演18:30
【東京】2/13(⽊)Bunkamura オーチャードホール 開演18:30
【東京】3/ 3(⽕)東京芸術劇場 コンサートホール 開演18:30
【東京】3/4(⽔)東京芸術劇場 コンサートホール 開演18:30